Facebookが東日本大震災で開発したシステムとは?- 児玉太郎氏が語る「3.11とFacebook」

2020年3月、カントリーマネージャの会は「危機状況下のカントリーマネージャ」というテーマで定期イベントを開催しました。イベントレポートを全5回でお届けします。第4回は、Anchorstar 児玉さんが、2011年の東日本大震災時にFacebook Japanのカントリーマネージャとして意思決定したことを語ります。

坂本:最後に児玉さん、大変お待たせしました。

これまでに経験した危機、さらに言えば、先ほどの小川さんの話の流れに乗って、ピンチをチャンスに変えた話をいただければと思います。

児玉:宜しくおねがいします。

児玉 太郎 / Taro Kodama
CEO & FOUNDER OF ANCHORSTAR/
KICKSTARTER JAPAN COUNTRY MANAGER

幼少期を米国で過ごし、1999年に当時は 社員数100名のベンチャー企業であったヤフー株式会社に入社しソーシャル系サービスの展開責任者に従事。
2010年にFacebook Japan株式会社の日本の一号社員としてカントリーグロースマネージャーとして就任。電通、リクルート、KDDIなど、日本企業との戦略的協業契約などを経て、アクティブ利用者数100万人に満たなかったFacebook Japanを4年間で2,000万人規模のサービスに成⻑させた。
日本と米国での生活経験、日本企業と米国企業での職務経験、また2つのベンチャー企業が大企業に成⻑する中で得た経験を活かし、より多くの海外企業の日本進出を支援するとともに、グローバル人材の育成、日本企業のグローバル進出を目的に、アンカースター株式会社を設立。
現在、Kickstarterのジャパンカントリーマネジャーを兼任。

Facebookに勤めている時に3.11(東日本大震災)を経験しました。その時の話は色々ありますけど、今回1つお話させて頂きます。

当時、原宿のマンション1LDKぐらいの部屋で Facebook Japanを運営していて、たぶん全世界の社員もまだ1000人ぐらいでしたね。未だ上場もしていなくて、最後の資金調達をしてるぐらいの時期でしたか、あまり大きい会社ではなかったです。

オフィスに自分がいて、日本人のスタッフがあと2人いて、残り5人本社から預かっているエンジニアがいたんですね。Facebook本社のエンジニアが5人日本にいて、私がマネジメントしていました。

その時に地震が起きたのですが、この5人のエンジニアが、何としてもアメリカに帰りたくない、と言っていました。

坂本:でも当時、日本は不安な状況でしたよね?

原子力発電所の問題などで。

児玉:5人全員アメリカから来ていましたが、エンジニアでまだ若かったんです。そのアメリカにいるご両親が「子どもはとにかく帰ってこれないのか」とFacebook社に苦情を言うわけですよ。うちの子を返せ、という勢いです。

だけど、当の本人達は、やっと勝ち取った日本プロジェクトへの参加だったので、1度本国に帰ってしまうと、絶対に日本に戻って来れないと思っていたんですね。

余震が続く中、本当は怖かったと思うんですけど、何としてでも僕らをアメリカに返さないでくれ、というのがチームメンバーの要求でした。

結果的に私が何をしたかというと、3月11日、まず地震が起きて20分後ぐらいに、シェリル・サンドバーグ、Facebook本社のNo.2から一行だけメールが来まして、「いくら使ってもいいから全員の命を守れと(書いてありました)」。

引用:gettyimages

さらに、各自のボーイフレンド、ガールフレンド、ペットなど含むといったことが書いてありました。

3月12日はテレビを見ながら過ごして、とにかく原子力発電所が不安だったので、3月13日とりあえず羽田に集まれ、と彼らに言ったんですよ。アメリカには帰しちゃいけないと思ったので、そこから出来るだけ離さないといけないとは思ったのですけど。

その時シェリルのメールに則って、彼氏/彼女等も連れてきていいよって言ったら、本当に全然知らない女の子とかが羽田に現れまして(苦笑)。

「誰この子?」って「俺のガールフレンド。六本木のクラブで仲良くなった」と話すので、何か分からないけど、その子たちも連れて全員分の飛行機のチケットを買いました。

American Express (AMEX)の法人用クレジットカード1枚しか持ってなかったんで、限度額オーバーで切れなかったです(苦笑)。空港からAMEXに電話して、もう東京を出ないといけないから、お願いだから限度額あげてくれと頼んで、全員分、見知らぬガールフレンドの分も含めてチケットを買い、全員で福岡に逃げました。

2週間、福岡にいましたけど、その間もやっぱり何度も本社に連絡しながら、大丈夫だから、大丈夫だから、と説得しまして。福岡は揺れていないから、と話をしたり、ご両親にもメールを送ったりしました。

私は(エンジニアの方々を)預かってる”お兄ちゃん”みたいなものなので、預かっている身としてこういう風にします、と、もしこういう事が起こったらすぐに香港等に逃げられるように福岡にしました、みたいな背景を色々説明して、いったん落ち着いていただいたという経験がありますね。

今Facebookに各人が自分の安全を報告する安否確認のシステムがあると思いますが、福岡にいる間にそのプロトタイプを作りました。

当時、世界のFacebookのために作った気は全くなくて、3.11の後、また更に大きい地震が日本に来る気になっていたんです。また地震が来るんじゃないかと思うと怖かったですが、5人のエンジニアたちが日本に留まる理由を何とかして証明したかった。

日本でやることがあるという事を証明したかったので、みんなで何か作ろうって言って、次の地震に備えて作った機能が、あの安否確認システムです。

それが今や、Facebook本社には、安否確認システムを含めてソーシャルグッドファンクションを作る部署があって、150人くらいのチームで運営しています。

ピンチをチャンスに変えたかどうかはわからないですけど、Facebookの中で今一番、社会的に意義のある機能の1つだと個人的に思います。

日本の地震での経験がなかったら、そして福岡のホテルでその機能を作らなければ、ソーシャルグッドの部署もできなかったかもしれないと思うと、Facebook社にとってピンチはチャンスだったかも知れないですね。

坂本:なるほど…それは貴重な経験ですね。

児玉:ただ、現在の新型コロナ禍と比べると、3.11当時は米国本社が揺れているわけではないので、今回はまた全然違う経験ですね。

私は現在、Kickstarterのカントリーマネージャーであり、同時に海外企業向けのコワーキングスペースの会社を経営していますが、新型コロナで本国がみんなパニックになっています。

特に、Kickstarterはニューヨークが本社ですので、誰も出社していないです。状況と対策が、各国ごとに違うので、取りうる選択肢や予算もみんな違いますよね。

3.11の時には、既にFacebookは潤沢にお金があったので、いくら使ってもいいから避難しろという感じでしたけど、会社のステージや若さが違えば、必ずしもみんなそういうわけにはいかないと思います。

会社と国ごとに違う対策をされていて、皆さん凄いなと思います。

坂本:シェリル・サンドバーグから指示が来たタイミングで、児玉さんは何を考えて、何を優先して行動されていたのでしょうか?

児玉:Facebookはソーシャルネットワークの会社なので、先ほど大坪さんが言われたのと似ていて、凄くピープル・ファーストでした。

大切な人を連れて避難していいと言うぐらい、シェリルが日本で起きていることを想像してくれたというのが、すごく大きかったと思います。例えば、彼女と離れ離れになるんだったら逃げたくないとか、そういうことを想像したかもしれない。

お金がいくらかかってしまってもいいから、愛する人も一緒に脱出してください、と言ってくれたのは、やっぱり会社の姿勢が現れていたと思います。

マーク(・ザッカーバーグ)も含めて、No.1・No.2が直接、事件が起きた20分後にメールしてくれて勇気がもらえましたし、自信をもって必要なだけお金をかけて、福岡でも、各人が個室の部屋でしっかり2週間滞在できて、帰るタイミング等も特に考えずに働くことができたのは、会社の理解とピープル・ファーストの姿勢があったから、だと思います。

坂本:大変貴重なお話をありがとうございます。時間がもうそろそろ1時間になるんですけど、小川さん・大坪さん、何かご質問やコメントありますか?

(続)


登壇者情報

CountryManager.jp Meetup Spring 2020

– 登壇者 –
大坪 直哉 / Naoya Otsubo
AppsFlyer Japan株式会社
カントリーマネージャー

大学卒業後、舞台俳優の道へ。33歳の時に検索連動型広告の大手、米Overtureに入社。2011年4月より2年間ビジネス・ブレークスルー大学大学院に通い、MBAを取得。12年に仏Criteoに転職し、アジア太平洋地域担当ディレクターとしてマーケットシェア拡大に貢献する。15年8月よりAppsFlyerの日本カントリーマネジャーに就任。坂本氏と共にTokyo MXで放送中「話題のアプリええじゃないか!」で先生役で活躍中。前ビジネス・ブレークスルー大学大学院同窓会会長。

小川 高子 / Takako Ogawa
パナリット・ジャパン
共同創業者 / CEO

新卒でワークスアプリケーションズに入社後、Google Japanに入社し、採用・人材開発業務に従事。2014年に同社内にてMOST INNOVATIVE & CREATIVE AWARDを受賞。2015年よりGoogle 米国本社にてStrategy & Ops部における シニアプロジェクトマネジャーとして、Googleの全社的な人事戦略業務に従事。現在はピープル・アナリティクス専門のBIソリューション、Panalyt(パナリット )の日本法人代表を務める。

児玉 太郎 / Taro Kodama
CEO & FOUNDER OF ANCHORSTAR/
KICKSTARTER JAPAN COUNTRY MANAGER

幼少期を米国で過ごし、1999年に当時は 社員数100名のベンチャー企業であったヤフー株式会社に入社しソーシャル系サービスの展開責任者に従事。
2010年にFacebook Japan株式会社の日本の一号社員としてカントリーグロースマネージャーとして就任。電通、リクルート、KDDIなど、日本企業との戦略的協業契約などを経て、アクティブ利用者数100万人に満たなかったFacebook Japanを4年間で2,000万人規模のサービスに成⻑させた。
日本と米国での生活経験、日本企業と米国企業での職務経験、また2つのベンチャー企業が大企業に成⻑する中で得た経験を活かし、より多くの海外企業の日本進出を支援するとともに、グローバル人材の育成、日本企業のグローバル進出を目的に、アンカースター株式会社を設立。
現在、Kickstarterのジャパンカントリーマネジャーを兼任。

– モデレータ –
坂本 達夫 / Tatsuo Sakamoto
Smartly.io
Head of Sales, Japan

2008年に東京大学経済学部を卒業後、楽天、Google、AppLovinを経て、2019年2月より北欧のマーケティングテクノロジー企業Smartly.ioに参画。日本第1号社員・事業責任者として日本展開をリードしている。
実益を兼ねた趣味として、累計30社以上のスタートアップにエンジェル投資を実行。
新サービス・アプリ紹介番組「ええじゃないか」(TOKYO MX)にMCとして出演中。