Panalyt小川氏が語る「サバイバル戦略としての日本進出」舞台裏

2020年3月、カントリーマネージャの会は「危機状況下のカントリーマネージャ」というテーマで定期イベントを開催しました。イベントレポートを全5回でお届けします。第3回は、Panalyt Japan 小川さんが、Panalyt Japan の珍しい立ち上げ経験を語ります。

坂本:大坪さんのお話、本当はもっと色々深堀りしたいんですけれども、小川さんのお話に移りたいと思います。

小川:宜しくおねがいします。PanalytのHard Things としては、2つお話しようと思っています。

小川 高子 / Takako Ogawa
パナリット・ジャパン
共同創業者 / CEO

新卒でワークスアプリケーションズに入社後、Google Japanに入社し、採用・人材開発業務に従事。2014年に同社内にてMOST INNOVATIVE & CREATIVE AWARDを受賞。2015年よりGoogle 米国本社にてStrategy & Ops部における シニアプロジェクトマネジャーとして、Googleの全社的な人事戦略業務に従事。現在はピープル・アナリティクス専門のBIソリューション、Panalyt(パナリット )の日本法人代表を務める。

1つが、ちょうど去年(2019年)から今(2020年3月)にかけての本国の資金調達難の時のお話です。もう1つが、今回の新型コロナ禍です。私たちは人事のプロダクトなので、バックオフィス関連のプロダクトとしてとても新型コロナのインパクトを受けています。

それぞれに打った解決策など色々あるんですけれども、その2つのお話をする前に、まずPanalyt Japanが、一般の海外支社に比べると非常に珍しいケースだと思うので、その前提から説明させてください。

まずPanalytはシンガポールの会社ですが、本国もまだシード(調達)段階です。

普通は、グローバルで展開する企業はグロース戦略で、本国である程度うまくいったので、資金もあるし、よし、ここから世界を目指すぞということで、次はどこに進出しようというのが一般的なお話だと思います。

ですが、Panalytの場合は、日本進出は完全にサバイバル戦略でした。というのも、昨年本国で去年資金難に陥っていて、その時に日本の投資家からすごく注目が集まったという経緯があるんです。

日本の投資家たちが、「このプロダクトは絶対日本はいける、投資もする」と言ってくれ、その条件として日本展開をしてくれというのが出発点でした。日本展開が条件というものの、投資家の中でもHR系のCVCは初期からプロダクトのセールスを無償で手伝ってくれたので、Win-winだったと思います。

さらに、Panalytの本国CEOは、もともとUberが世界展開を始めた初期の人事部長でした。彼は、Uberの国際展開・成長を支えた人でもあるのですが、その経験から、日本や中国といったローカル色が強い、独自のカルチャーを持った国に進出をする際は、支社を独立会社として、当該国で資金調達してご自由にやってください、という姿勢で展開するのが上手く行くと考えていました。

例えば、Uber Chinaだったり、Yahoo! JAPANに似た立ち上げです。

そのため、Panalyt Japanは、私と元Googleで同僚だったトランという者が共同創業で立ち上げていますが、私たちにオファーされたのは非常に珍しい条件でした。それは、

私とトラン2人が、パナリット・ジャパンを独立会社として立ち上げて、自分たちで資金調達もする、その代わりにPanalyt Japanの株式を持たせてもらうというやり方でした。

もう半分起業家という感じで、一般的なカントリーマネージャーのイメージとは違う形でスタートしました。

坂本:本国のPanalyt とJapanチームの株式比率は、どういう形になっているんですか?

小川:実際に資金調達をやり始めていた半年前くらいですかね、多くの投資家から「シード段階で、本国と同じプロダクトで売り方の戦略もほぼ変えなくても売れるプロダクトであるならば、わざわざ資本を変えないほうがいい」というアドバイスを受けまして。

ということで、私たちも「確かに今のところ分ける必要はないね」と考え直しました。

なので最初に頂いたオファーをあえて巻き戻して、(本国の)100%子会社でやります、という形態にしたんです。だから今は100%子会社の体で、自分たちが持っていたはずの、Japanの株式も、いったん本国の株で別条件で出してもらっています。

ただ、2023年の期限までに独立したいと思ったら、もとの契約書が有効ですよ、という条件も付け加えてもらい、非常に珍しい形に落ち着きました。

付け加えると、日本でも海外でも未だシード段階なんですが、Japanの売り上げが本国とほぼ同等なので(2020年5月時点では日本のMRRが本国を超える)、Panalyt Japanの立場がかなり強いのも特徴です。

日本支社のメンバーも、全員バイリンガルで本国の仕事に何かしらの形で関わっているので、Panalyt Japanというよりは、One Panalytの中で、Japan Office はロケーションだけ違うというイメージです。

坂本:珍しいパターンですよね、それは。

小川:サバイバル戦略として進出したPanalyt Japanなんですが、JapanチームがIR(インヴェスターリレーション)を割と得意としていて、スタートアップ業界で、色々なVCと引き合わせてもらったりしています。

自分たち(Japan Office)の運用資金は、まず自分たちで投資家を見つけ、本国に投資してもらって、そこから日本の取り分をもらっています。仕送りがもらえないので、自分で稼いできて、時には親の生活費まで仕送りする苦学生ぐらいの勢いでやってます。

日本支社として、普通であれば本国が調達してそのお金のいくらかを運用資金としてもらうと思うんですが、うちの場合、お金が全くなかった時は独力で調達のドライブをかけていました。

また、最悪のケースは、止めるところを止め、延命措置を図る決断を強いられます。

一番最初に止めるのが、べンダー代をちょっと数ヶ月遅らせてもらったり、ツールを使わなくしたりとか、そういったところからカットしています。

その次の段階にマネジメントの給与、その次の段階に(ここまではまだ行っていないですけど)大事なメンバーの人件費、というような感じで、本当にピンチになったら何から削ぎ落していくか、というのをかなり明確にしてやってきました。

本国への資金調達のサポートを急いでやらないといけなかったので、約1ヶ月で、日本の投資会社から4000万円のブリッジファイナンスを調達して、それを運用費として当てたり、今はアーリーシードの段階ということで8000万円、日本の投資家から投資をして頂き、Panalyt Japan単体で本国に1.2億万円分の資金調達をアシストしています。

それが、第1の、資金調達難の時のピンチと乗り越え方でした。

坂本:ありがとうございます。FounderやCEOがシンガポールにいて、日本語がきっと話せない中で、日本の投資家を回ってお金を集めるって、大変だったと思うのですが、その辺りはどうされたのでしょうか?

小川:はい。ただ私達が日本にいて、本国との翻訳・通訳が出来ました。また、日本の投資家も、海外のイケてるスタートアップに投資したいっていう気持ちはあれど、コミュニケーションをとれないから今までうまくいかなかったという事もあったので、うまくそれをブリッジできたのかな、と思っています。

坂本:ニーズが日本の投資家側にもあったということですね。お話に戻ると、その資金調達にまつわるHard Things は継続中なのでしょうか?

小川:少し落ち着いてきているものの、まだ今シード調達期でして、今でも、日本の投資家や機関投資家から受けるデューデリジェンスのサポートをしています。

坂本:当然、資金的な輸血をしつつ、日本のクライアントへのセールスとかも、その限られたメンバーの中で、同時進行でやってらっしゃるということですよね?

小川:バリバリやっています。

坂本:忙しそう。セールスだけやっている自分が、暇なんじゃないかという気さえしてきました。

小川:いえいえ。Panalyt Japanのメンバーは、インターン等を含めて現在(2020年3月)5名でやっていますが、本国の資金調達、財務のヘルプ、プロダクト開発にも携われ、もちろんセールスをやり、ということで、全面的に経営に関われているのはいい経験なのかな、と思います。

坂本:超ポジティブでいいですね。もう1つのHard Things が、今回の新型コロナ関係でしたよね。

小川:人事向けのソリューションなので、やっぱりセールスサイクル(契約までの営業期間)は伸びているかなということ、新規の営業のところで非常にアポを入れづらくなった、というのことが、この新型コロナ禍では起きています。

ですが、ちょっと視点を変えて、ピンチをチャンスに変えられないかと思ったときに、すごくいいアイディアを思いつきました。

日本の企業は、いきなりリモートワークを始めても、デジタルワークシフトに追いつけていない。特に、日本では勤怠を非常に大事にします。今までは、スタンプで出勤・退勤の時間がとれていたものが、今どういう働き方してるのか全然わからない。

マネジメントや人事部が非常に混乱しているこの状況に対して、私達のピープルアナリティクスで助けてあげられる部分があるな、と思っています。

そこで始めたのが、Office365だったりG SuiteだったりSlackだったり、なんでもいいんですが、そうしたインターナルツールでのコミュニケーション量とネットワークの分析をする事によって、デジタルな勤怠を取ることができると考えています。

今までであれば、例えば働く時間=オフィスにいる時間、それであまりに長い人がいたら、この人大丈夫かな?サポート必要かな?っていうのをマネジメントが把握できていたところ、それを今できなくなっている。

しかし、例えば深夜2時まで、常にメールをたくさん返していたり、G Suiteで新しいプレゼンテーション作っていたり、こういう人がいたら確実に忙しくて困っているので、それに対してマネジメントがそれに気付いてサポートしてあげれる体制がつくれますよね。

また、この状況下では、今まですごく色んな他部署と繋がっていた、もしくは色んな個人と繋がっていた人が、急にそのネットワークの力が減少してくるといったことがあるんです。

コミュニケーションのオンラインでの取り方がわかんない、もしくはエンゲージメントが下がっている、行動データにそういった変化が表れている時というのは、サポートしてあげたほうが良い事が多いです。

なので、そういったデジタルデータを捉え、ちゃんと今組織がどういう状態なのかを把握するためにPanalytを使うという提案をしまして、これが非常に評価が高いです。日本でも先日、従業員数が約3,000名の企業がOffice365をパナリットと完全連携しました。

本国のプロダクト開発に対し、日本としてピンチをチャンスに変えるアイディア出しをできたと感じています。

引用:Panalyt Japan

坂本:深夜の2時とかにSlack返して、達夫寝ろってよく人事から怒られていますが、日本の伝統的な会社だと、そういったデータドリブンのアイディアがそもそもない、といったことがありそうですね。

日本から、こういうニーズがあるからプロダクトをこういう風に変えましょうとか、こういう外部ツールを連携しましょうといったアイディアを本国に働きかけて、どんどんプロダクトを良くしていくといった流れなのでしょうか?

小川:はい、これは決して日本だけの問題じゃなく、海外でも絶対ニーズあるよねという認識から、今ONA(ネットワークアナリティクスの分析フォーマット)は、かなり力を入れて、優先順位を上げて開発しようという流れになっています。

坂本:なるほど。使われているツールは、グローバルでそんなに大きく差はないから、会社で横断的に使えるような、そういう分析ソフトウェアを作れれば、他の会社にもすぐに展開できますよね。

小川:はい。

坂本:面白いですね!ありがとうございます。もっと聞いていきたいのですが、そろそろ児玉さんに聞いていきたいと思います。

(続)


登壇者情報

CountryManager.jp Meetup Spring 2020

– 登壇者 –
大坪 直哉 / Naoya Otsubo
AppsFlyer Japan株式会社
カントリーマネージャー

大学卒業後、舞台俳優の道へ。33歳の時に検索連動型広告の大手、米Overtureに入社。2011年4月より2年間ビジネス・ブレークスルー大学大学院に通い、MBAを取得。12年に仏Criteoに転職し、アジア太平洋地域担当ディレクターとしてマーケットシェア拡大に貢献する。15年8月よりAppsFlyerの日本カントリーマネジャーに就任。坂本氏と共にTokyo MXで放送中「話題のアプリええじゃないか!」で先生役で活躍中。前ビジネス・ブレークスルー大学大学院同窓会会長。

小川 高子 / Takako Ogawa
パナリット・ジャパン
共同創業者 / CEO

新卒でワークスアプリケーションズに入社後、Google Japanに入社し、採用・人材開発業務に従事。2014年に同社内にてMOST INNOVATIVE & CREATIVE AWARDを受賞。2015年よりGoogle 米国本社にてStrategy & Ops部における シニアプロジェクトマネジャーとして、Googleの全社的な人事戦略業務に従事。現在はピープル・アナリティクス専門のBIソリューション、Panalyt(パナリット )の日本法人代表を務める。

児玉 太郎 / Taro Kodama
CEO & FOUNDER OF ANCHORSTAR/
KICKSTARTER JAPAN COUNTRY MANAGER

幼少期を米国で過ごし、1999年に当時は 社員数100名のベンチャー企業であったヤフー株式会社に入社しソーシャル系サービスの展開責任者に従事。
2010年にFacebook Japan株式会社の日本の一号社員としてカントリーグロースマネージャーとして就任。電通、リクルート、KDDIなど、日本企業との戦略的協業契約などを経て、アクティブ利用者数100万人に満たなかったFacebook Japanを4年間で2,000万人規模のサービスに成⻑させた。
日本と米国での生活経験、日本企業と米国企業での職務経験、また2つのベンチャー企業が大企業に成⻑する中で得た経験を活かし、より多くの海外企業の日本進出を支援するとともに、グローバル人材の育成、日本企業のグローバル進出を目的に、アンカースター株式会社を設立。
現在、Kickstarterのジャパンカントリーマネジャーを兼任。

– モデレータ –
坂本 達夫 / Tatsuo Sakamoto
Smartly.io
Head of Sales, Japan

2008年に東京大学経済学部を卒業後、楽天、Google、AppLovinを経て、2019年2月より北欧のマーケティングテクノロジー企業Smartly.ioに参画。日本第1号社員・事業責任者として日本展開をリードしている。
実益を兼ねた趣味として、累計30社以上のスタートアップにエンジェル投資を実行。
新サービス・アプリ紹介番組「ええじゃないか」(TOKYO MX)にMCとして出演中。